こんな方におすすめ
- 高い信頼性が求められる過酷な環境下で使用する電磁アクチュエータやセンサの開発を進められている企業様
- 複雑な形状の磁気部品を製造したい企業様
ボンド磁石の特長は「形状自由度」と「加工精度」
フェライト焼結磁石より磁力が強く、希土類焼結磁石より形状自由度が高い
「ボンド磁石」とは、樹脂などの結合材(バインダー)と混ぜ合わせた磁性粉を、成形加工して製造する永久磁石です。ボンド磁石の利点は、形状自由度と加工精度の高さにあります。このため薄肉や凹凸などの特殊形状でも、図面通りに仕上げやすく、精密部品の開発で真価を発揮します。
図1は磁力(Br)、磁気の抜けにくさである保磁力(HcJ)という2つの指標で表している、一般的な磁石のポジショニングマップです。磁力も保磁力も、希土類ボンド磁石はフェライト焼結磁石と希土類焼結磁石の中間に位置します。
設計自由度が高い「等方性」ボンド磁石
ボンド磁石は、等方性と異方性の2種類に分けられます。等方性のボンド磁石は、磁化しやすい方向が特定の向きに依存せず、どの方向でも同じ磁化特性を示します。異方性は等方性よりも強力な磁力を発揮しますが、磁化しやすい方向が定まっています。つまり、等方性のボンド磁石は「異方性よりも磁力は劣るものの、扱いやすさに長けている」という特長をもちます。多極着磁が容易で、極配置を用途に応じて細かく制御でき、磁気回路の設計自由度が高まります。
このように、永久磁石は、製造方法や磁化の特性に応じて最適な用途が異なります。中でも、ムラタが注目しているのは、等方性ボンド磁石です。「形状自由度」「加工精度」「磁気回路の設計自由度」といった点を活かせば、精密部品の設計の幅を拡張できると考え、等方性ボンド磁石を開発しました。
ボンド磁石の「磁力」と「耐環境性」は圧縮成形で強化
ボンド磁石の主な成形方法は、シート成形・射出成形・圧縮成形の3つが挙げられます。中でも、金型に入れた材料をプレスする圧縮成形は、他の成形方法よりも磁性粉の密度を高められる点に特長があり、小さくても磁力が強く耐環境性の高い磁石を製造できます。
また、圧縮成形は、電子部品を製造するムラタが、長い歴史の中でノウハウを蓄積してきた領域です。高い品質を提供できる技術を数多く保有しており、等方性ボンド磁石が持つポテンシャルを最大限化できます。
磁力と保磁力を高めたムラタのボンド磁石
新たに開発した2つの等方性ボンド磁石
ムラタが新たに開発したのは使用する希土類が違う2種類の等方性ボンド磁石です。希土類系磁性粉と熱硬化樹脂を混ぜ合わせ、圧縮成形で製造します。
なお、磁性材料である2種類の希土類系磁性粉もムラタで開発しています。
図2でわかるように、ムラタのボンド磁石が特に強みを発揮するのは、高温環境です。従来品に比べ保磁力が優れているので、高温下でも必要な性能を維持できます。つまり、高温減磁耐性を引き上げることで従来のボンド磁石の課題を改善しました。
NdFeBボンド磁石(ネオジム-鉄-ホウ素)
ネオジム系の等方性ボンド磁石です。従来品よりも優れた磁力と保磁力を発揮し、アプリケーションのさらなる小型化に活用できます。なお、すでに初期量産に対応可能なラインが整っており、実用化や量産移行が可能な段階です。
SmFeNボンド磁石(サマリウム-鉄-窒素)
サマリウム系の等方性ボンド磁石です。そもそもサマリウム系ボンド磁石は、耐食性と耐熱性がネオジム系を上回る点が注目されてきました。この特長をさらに活かして高性能化したものが、ムラタのサマリウム系ボンド磁石です。現在、スケールアップに向けた試作ラインを構築中です。
高い保磁力を有するムラタのサマリウム系ボンド磁石
一般的に、ネオジム系ボンド磁石はサマリウム系ボンド磁石に比べると製造の難易度は低く、実際に広く活用されています。逆に、サマリウム系ボンド磁石は高性能ではあるものの高度な製造技術が必要で、普及は限定的です。
ムラタが新たに開発したサマリウム系ボンド磁石は、従来品よりもさらに高い保磁力を持ちます。その土台となっているのは、結晶構造をナノスケールで均一に制御する技術です。独自組成設計とプロセスを改良することで、高い保磁力を引き出しました。
減磁率の経時変化
図3の「α」は磁力の低下率を示しており、その数字は-0.06。つまり、環境の温度が1℃上がるごとに低下する磁力は、わずか0.06%です。なお、「β」は保磁力の低下率を示しており、こちらも従来品より高いスコアです。さらに、図4は「120℃×85%の湿潤環境下」で加速試験をした結果です。未塗装の状態でも減磁率が5%以内に抑えられる特徴を有していることを証明しました。
ボンド磁石の特長を活かすための「2色成形技術」
異なる2種類の材料をひとつの部品に成形
ムラタは、ソリューション提案の幅を拡げるため、製造技術の開発にも注力しています。等方性希土類ボンド磁石と併せて開発したのが「2色成形技術」です。これは、圧粉磁心とボンド磁石といった質の異なる2種類の材料をひとつの部品に一体成形する技術です。
接着工程を削減し、高い加工精度で図面通りに仕上がる
一例を挙げると、モーターのローター開発に役立ちます。
一般的に、ブラシレスモーターのローター製造は、磁心と永久磁石を「接着材で固定」します。一方「2色成形技術」は、ボンド磁石の材料と圧粉磁心に高い圧力をかけ「一体成形して接合」するので、接着工程を削減できると同時に品質が安定します。加えて、金型を使って成形するので、非常に高い加工精度で図面通りに仕上がります。
また、部品の界面強度は、接着剤で固定した場合と比べても遜色ありません。これは、ボンド磁石と圧粉磁心の表面にある粒子を、高い圧力で互いに噛み合あわせた後、熱硬化樹脂を加熱して固めているからです。なお、加える圧力の大きさは最適化を実現しており、界面形状や内部構造が歪むことはありません。
磁気回路の設計自由度が高く、モーターを効率化
2色成形技術を利用すれば、磁気回路の設計自由度が向上します。
図5のように星形の圧粉磁心とそれに合わせてボンド磁石を成形したローターを搭載したモーターは、エアギャップの表面磁束密度のピークが増加する一方、正弦波の歪みが低減するので、トルクの大きさと滑らかさの両方が向上します。さらに、こうした磁気回路では、マグネットトルク(モーター内部で電磁石と永久磁石の間に生じる反発力・吸引力)だけでなく、リラクタンストルク(モーター内部で電磁石が磁心を引き寄せる力)を積極的に利用でき、小型モーターの効率向上が期待できます。
このように表面磁石型モーター(SPMモーター)でも、埋め込み磁石型モーター(IPMモーター)に近い磁気回路をひとつの部品で実現できる点が2色成形技術の真骨頂と言えます。
「等方性希土類ボンド磁石」の活用が期待される分野
活用分野 01 滑らかな動作が求められるヒューマノイドロボット
等方性希土類ボンド磁石は着磁の自由度が高いので、磁束密度を理想的な正弦波に近づけて静粛性を担保することができます。精密な制御が求められるヒューマノイドロボット、そのほか医療用ロボットなどでは、滑らかに動作する小型アクチュエータが重要です。
活用分野 02 AIサーバ向けの冷却装置・ファンモーター
加速度的に普及しているAIサーバですが、膨大な発熱が課題となり、その冷却技術に注目が集まっています。厳しい環境下におかれる冷却装置の消費電力削減、小型化、高出力化にムラタのボンド磁石は役立つはずです。
活用分野 03 FA向けエンコーダー
FA、つまり工場の自動化において、粉塵などが舞う環境下でも正常に動作するエンコーダーが求められています。また、等方性ボンド磁石の特性、多極着磁のしやすさと磁力の強さを活かせば、磁気エンコーダーの分解能を高めることができます。
「材料から製品まで」のムラタだから提供できるソリューション
電動化の流れが浸透する今、世界の消費電力のうちモーターが占める割合は50%にのぼるという報告もあります。このため、モーター性能の向上は、環境負荷の低減に直結する要因です。そこで、モーター性能の根源とも言える永久磁石に注目したムラタは、10年以上前に磁性材料の開発に着手し、その真価を引き出す製造技術の開発を同時並行で進めてきました。
等方性希土類ボンド磁石の開発では、ムラタ独自の組成設計とプロセスを工夫することによって、磁性粉内の微細構造をナノスケールで制御できるようになり、磁力や保磁力の向上を実現しました。さらに、このボンド磁石を活用した「2色成形技術」を開発し、モーター性能の向上に貢献できることも実証しました。つまり、ムラタが開発した等方性希土類ボンド磁石とその2色成形は、「材料から製品まで」幅広い技術を統合した結果です。
このように、「垂直統合型の一貫生産体制」で多くの社会課題、パートナー様の課題にワンストップで応えられるのはムラタの強みです。
よくあるご質問
目安で言えば、最小サイズは直径10mm、最小肉厚は1mmです。ただし、限界値はその他の条件に左右されるので、詳細はお問い合わせください。
ムラタが保有する金型で作れる形状であれば可能です。もし希望どおりの金型がない場合は、解決したい課題についてお話をうかがい、最適な金型を提案いたします。
ネオジム系ボンド磁石の錆をコーティングで防いでいます。一方、サマリウム系ボンド磁石は、コーティングなしでも高温多湿の環境下でほぼ錆びないことを確認済みです。具体的な数値はお問い合わせください。
ネオジム系ボンド磁石は量産可能です。サマリウム系ボンド磁石は、まだ量産に対応できないものの、研究開発フェーズからパイロットフェーズに移行中で、試作ラインの構築を進めています。
既に確立した技術では、ボンド磁石と圧粉磁心だけを使った2色成形です。ただし、磁心にシャフトを通した状態での2色成形技術も実現可能です。今後の方向性は共創パートナーの課題に応じて見極める予定です。
技術を確立しているパターンは限られていますが、共創パートナーの課題に合わせて開発の方向性を見極めています。詳細はお問い合わせいただき、解決したい課題をご相談ください。
開発者の声
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村田製作所
吉田 健二(よしだ けんじ)
磁性材料開発部電動化の加速は社会に新しい価値をもたらし、私たちの暮らしを豊かにしています。ムラタは既存事業であるMLCC(積層セラミックコンデンサ)や各種センサで世界の電子機器を支え、確かな信頼を築いてきました。いま磁石はムラタにとって新規領域であり、大きな挑戦です。これまで培ってきた材料技術と開発力を更に進化させ、高耐熱・小型・高信頼のボンド磁石で新しい価値を創出します。ムラタ品質で安心・安全、そして持続可能な電動化社会の実現に貢献したいと考えています。
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佐藤 和樹(さとう かずき)
「ムラタが磁石を?」と思う方が多いかもしれません。しかし、希土類磁性材料の開発は、ムラタの開発思想とプライドに基づき、高耐熱・小型・高信頼のボンド磁石の実現に挑んできた新規事業領域です。ムラタが開発したボンド磁石で、自動車や航空宇宙、医療、そしてロボティクス等、幅広い業界の皆様へソリューションを提供していきたいと考えております。
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岸本 大輝(きしもと だいき)
私たちの2色成形技術は、ムラタが培ってきた「成形技術」と「新しいことにまず挑戦してみる姿勢」から生まれました。従来、磁石と鉄心は接着による組み立てが主流で、形状・設計の自由度や、製造のコスト面に課題がありました。これらの課題を乗り越えるため、私たちが注目したのが接着に頼らない一体成形でした。ムラタの2色成形技術は、高精度に実現した複雑形状により、磁束を効率的に制御できるので、小型化・軽量化・高効率化の可能性が拡がります。構想段階から試作や量産検討まで、相互理解とリスペクトを分かち合える共創パートナーをお待ちしています。
お知らせ
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共創パートナー募集中の開発テーマ「ハイスペック等方性希土類ボンド磁石」を掲載しました。
お問い合わせ
ボンド磁石、2色成形技術に興味をお持ちの方や技術の詳細を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※当商材は参考品または開発品であるため、仕様、外観は予告なく変更する場合があります。